ビクトリノックスの歴史と伝統についてご存知でしょうか?
1884年に設立されたビクトリノックスは、確固たる社会的目的をもつナイフメーカーとしてスタートし、世界で50万店舗を持つグローバルブランドに成長したことはよく知られています。その伝統と存在意義を振り返り、ビクトリノックスの歴史の中でもあまり知られていない部分をご紹介します。
スムーズなAloxハンドル
スイスアーミーのパラメディック・ナイフ
2016年に発売されたはさみ付きのパイオニア Xは、多くの人に知られています。しかし、このモデルの原型が1950年代に遡ることを知る人はほとんどいません。それは、最初のパイオニアと1961年のソルジャーナイフが発売される数年前のことでした。
当初のアイデアは、スイスアーミーの救急隊員のために、戦地で包帯や絆創膏を簡単に切れるはさみ付きのソルジャーナイフを作るというものでした。しかし、スイス政府は、全兵士がすでにナイフを所持しているので、救急隊員にさらにはさみ付きのナイフを持たせる必要はないと判断しました。ちょうどそのころ、ビクトリノックスは新しいパイオニアナイフを一般向けに発売しようとしていました。はさみ付きのモデルについては、スイスアーミーが興味を示していないことやその製造コストから、アイデアを却下することになりました。発売から何年も経ち、パイオニアはビクトリノックスの人気商品となり、はさみ付きバージョンへの需要も高まりました。そして、最初のプロトタイプが製造されてから60年という年月を経て、パイオニア Xが発売されたのです。この写真は最初のプロトタイプと1961年のソルジャーナイフのプロトタイプです。
ウェンガーがスイスアーミー用にビクトリノックスに発注
スイスアーミーが約100年にわたって、ビクトリノックスとウェンガーにソルジャーナイフを半分ずつ注文していたことは広く知られています。スイスアーミーがどちらのブランドのナイフをより好んでいるかを公に宣言したことはありませんが、カン切りについては明確な好みがありました。
三代目カール・エルズナーはソルジャーナイフのデザインを刷新することを望み、1961年にスイスアーミーは従来のものよりも小さく軽量なAloxモデルの新デザインを受け入れました。スイスアーミー・ソルジャーナイフのもう一つのサプライヤーであるウェンガーも、このモデルの製造開始を余儀なくされました。しかし、ビクトリノックスのカン切りは1951年にすでに特許をとっていたため、これと同じものを使うことはできませんでした。スイスアーミーはすべてのナイフがサプライヤーに関わらず完全に同一であることを要求していたため、ウェンガーは1961年以降、このパーツをビクトリノックスに注文し、それを使ってソルジャーナイフを製造せざるを得なくなりました。
しかし、ビクトリノックスは常に、ウェンガーを競合相手であると同時に友人でもあると考えてきました。そのため、この状況を有利に使うのではなく、彼らと紳士協定を結びました。ビクトリノックスがその注文から利益を得たことは一度もありません。
ビクトリノックスのクロス&シールド
クロス&シールドは、ずっとビクトリノックスのアイデンティティの一つだったと思っていませんか? 実は、そうではないのです。記録によると、このエンブレムは1909年7月23日に初代カール・エルズナーによって初めて商標登録されています。これは会社設立から約25年後のことです。この日までは、このロゴはナイフに使用していましたが、ロゴのないナイフも製造していました。ロゴなしのナイフは、職人技があまり使われていない製品として割引価格で販売されていたのです。